フィリピンSV

19周年という節目—DAWNでの体験—

赤澤真実
都市イノベーション学府 都市地域社会専攻・都市地域社会コース

フィリピンについて2日目の朝、私たちはDAWNを訪問した。DAWNは女性の自立のためのネットワーク(The Development Action for Women Network)であり、フィリピン人移民女性労働者とその子ども(JFC)の人権および福祉の促進と保護のために設立された。その主要授業はカウンセリングと法律相談および福祉サービスや自立生計支援、調査・問題提起のための活動など幅広く行っている。

私たちが訪問した2月14日は、なんとDAWNが設立されて19周年というアニバーサリーの日であった。そのため、DAWNの説明や自立生計支援の一環として行われている織物見学だけでなく、JFCの母親のみなさんや子どもたちと一緒に日本食を作ったり、ゲームをしたり、歌をうたったりとみんなで一丸となって濃密な時間を過ごすことができた。そして、そのような交流を通して、お互いの文化や習慣を伝え合うだけでなく、個々人のレベルで触れ合い、コミュニケーションをとることができた。さらに、たくさんの美しいシクハイ(Batik生地(ろうけつ染め)の布による縫製)を見ることがきた。女性たちが1つ1つを丁寧に縫製したその品物は、どれも非常に繊細で細かく美しい模様が縫製されており、思わず手が伸びてしまうほどであった。

そして、フィリピン滞在中に訪問した団体の中で、DAWNの滞在時間は最も長かったが、その中で最も印象的であったのが、女性たちや子どもたちの明るい笑顔である。至るところから、笑い声がこだまし、みんなが顔をくしゃくしゃにしながら笑っていたのだ。もちろん、19周年記念のイベントであったということもあるだろう。しかしながら、それだけでなく、DAWNというあの場所が女性や子どもたちにとって笑顔になれる「場」になっているように感じた。彼女らは、80年代に出稼ぎのためにフィリピン人エンターティナーとして来日し、日本で出会った男性と子ども(JFC)をもうけた。しかし、認知や国籍、アイデンティティなど国境をまたいだ複雑な問題を今でも抱えているのだ。このような中、彼女たちは、そのような背景を感じさせないほど、明るく笑顔で、自らの力で自立するために行動を起こしている。また、出会った女性は、DAWNに来て自分に自信をもてるようになった。と話してくれた。DAWNはこのような活動を支えているのである。私にはそこにいるすべての女性や子どもたち、スタッフのみなさんの間に家族のような強い絆を感じずにはいられなかった。

しかしながら、その笑顔を見たときに彼女や子どもたちにとっての本当の幸せとは…どうしてこのDAWNという団体ができたのか…どうしてここに女性や子どもたちが集まっているのか…ということを改めて考えなければならないと思った。2015年2月14日、19年という月日の重みと、そこに生きる人々の足跡を感じずにはいられなかった。