パラグアイSV

ニャンドゥティ調査

栗山頌子
人間文化課程 3年

今年の渡航は、5日間アスンシオンに滞在した後にS村に向かう農村チームと、アスンシオンに残ってパラグアイの民芸品・ニャンドゥティについて調査するチームに分かれて行動した。私はこのニャンドゥティ調査班として活動した。

1.ニャンドゥティの魅力

ニャンドゥティとは、現地のグアラニー語で「蜘蛛の糸」という意味をもつ伝統的な刺繍だ。ニャンドゥティの模様にはたくさんの種類があり、それぞれに意味が込められている。この色鮮やかな色がニャンドゥティに惹きつけられるひとつの理由である。初めは白いものしかなかったが、誰かが色つきのものを売ったところ大変好評になったため、現在では鮮やかな配色のものが多く売られるようになったそうだ。

色とりどりのニャンドゥティ。製作過程を見学させていただきました。

ニャンドゥティは人々の生活に深く根付いている。ニャンドゥティの主要産地であるイタグア市では街の至る所でニャンドゥティを売る店やニャンドゥティを飾る家を見かけた。イタグア市の博物館の人の話によると、ニャンドゥティは教会の飾りとして用いられていたらしく、教会のマリア像の周囲には非常に見事なニャンドゥティが飾られていた。パラグアイの人々、特にニャンドゥティ起源の地といわれるイタグア市の人々はニャンドゥティのことをとても誇りに思っていて、それは自分たちのアイデンティティであるという人もいたほどだった。

今回の調査の目的は、ニャンドゥティの市場調査とニャンドゥティ製作者の方の生活状況の調査である。
私たちは国際協力ゼミのメンバーを中心に、NGOと連携してニャンドゥティのフェアトレードを目指す活動を始めている。この事業は、公正な直接取引による製作者の所得増大を最終的な目標としている。今回の調査は最終目標への最初の一歩として、ニャンドゥティの製作者と販売店の関係や製作者の生活を明らかにするため、首都のアスンシオンと生産地のイタグア市でニャンドゥティ販売店や製作者を対象にインタビュー調査を行った。

今回の調査はSVパラグアイ渡航としては初めての試みであり、学生メンバーには調査の下地がなかった。現地で活動するNGOや現地の大学関係者の紹介よって、調査に協力して頂ける方を紹介してもらったり、直接自分たちの足で製作者を探したりした。特に一般の製作者は、どこに住んでいるのかといった情報が少ないため、暗闇を手探りで進むかのようだった。

ニャンドゥティを製作する様子です。

しかし、元・青年海外協力隊の田代志織さん(ミタイ基金サポーター)の助力と現地の方々の暖かい協力のおかげで、予想以上の成果を上げることができた。しかし、ともにフェアトレード活動を進められそうな製作者の方はなかなか見つからなかった。ところが、帰国3日前になって、フェアトレードに興味があるという製作者の方がいると連携大学の関係者より連絡を受け、再びイタグア市へ向かった。
私たちが紹介されたのは、4人の製作者グループの方々だった。彼らは私たちがそれまでにインタビューしたどの製作者の方よりも少ない賃金で働いていて、通訳の方も思わず聞き返してしまうほどだった。
中でも最も印象的だったのは、耳の不自由な青年の製作者の方だ。彼は幼少期に病気が原因で、難聴になってしまったそうだ。しかし、彼の作品は、そうしたハンディキャップを感じさせないほど素晴らしいものだった。彼の叔母の話によると、補聴器を買うお金があれば、また耳が聞こえるようになるらしい。難しいけれど、私たちのフェアトレード活動を通して、こうした人々の困難が少しでも解消できたらと強く思った。

今回の調査はあくまで限られた時間や人からの調査による結論・予測が得られただけであり、フェアトレード活動発展のためには、さらに多角的な側面からの調査が必要である。しかし、現地に行ったことで新たな情報、そして疑問を得ることができ、わずかながら前進することができた。また、製作者の方に実際に会ってお話ししたことで、フェアトレード事業にもっと本気で取り組もうと決意を新たにすることができた。
ニャンドゥティ調査もフェアトレード事業は現段階では未熟だが、それだけ未来に発展の可能性があると私は考えている。この渡航で得たものを後続の後輩たちに伝え、現地で活動するNGOと連携することからこれからも継続させていきたい。

コラム
調査を通して感じたこと

今回の調査を通して、人との繋がりの大切さを非常に実感した。私たちはスノーボーリング方式という調査手法を用いて、人づてに調査協力者を探しながら調査を進めた。調査対象者は皆、全くの善意によるもので、異国からの突然の来訪者を本当に暖かく迎えてくださった。今回の調査は、こうした方々の協力なしにはなしえなかったことである。同時に、元・青年海外協力隊の田代志織さんにもお礼申し上げたい。調査中は田代さんの行動力と明るい人柄に何度も助けられた。現地の方々の理解と協力が得られたのも、ひとえに田代さんの人望のおかげである。
調査を通して自分の力不足を至る場面で感じた。しかし、それでもなんとか最後までやりきることができたのは、多くの人々の協力があったからである。大学生になって、自分は一人の人間として自立できたと考えていたが、この渡航を通して、実は周囲の人に支えられているのだと気づかされた。そしてそのことに気付いたことで、人間として少し成長できたような気がする。今回の渡航で得たものを今後も忘れずにいたいと思う。
最後に、パラグアイ渡航にかかわったすべての方々に、心から感謝の意を表します。

イタグア市のコロン通りの写真です。ニャンドゥティの露店が並ぶストリートがあります。