パラグアイSV

農村調査

広瀬太智
人間文化課程 4年

大橋黎菜
人間文化課程 3年

村へと続く赤土道の様子です。

世帯調査

住民の家族構成や年齢、職業などの基礎データに加え、村における住民のニーズや現在ある学校に対しての意見、その他様々な意見について調査を行った。調査は家を一軒一軒歩いて訪ね、インタビュー形式で行った。住民の方々は皆親切で、訪ねていくと庭先に椅子を出してくださったり、テレレ(冷たいマテ茶)を出してくださったり、快く調査に応じてくださった。住民とほぼ一対一でお話できるため、世帯調査の時間は、住民との信頼を築く上でも様々なことに関する多様な意見を集める上でもとても大切な時間であった。

マッピング

マッピングとは地図を作ることである。昨年収集データだけでは不十分だったため、今年も引き続き行った。昨年は自分たちで村を見て回って地図を作っていくだけであったが、今回はそれに加え、住民に書いてもらった手書き地図、Google Mapの航空写真などと照らし合わせながら村の地図を作っていった。そのため、より正確で詳細な地図を作ることができ、これは世帯調査のデータ整理や意見などの分析をする際にとても役立った。

Google Mapを用いて作った地図です。

ワークショップ

今回は以下のような3つのワークショップを行った。

①参加型ワークショップ
村で起きている問題について把握するためにKJ法4と呼ばれている問題分析の手法を用いて、住民参加型のワークショップを開催した。今回は教育の質、学校建設プロジェクトの一環として、村に存在するニーズを住民とともに整理するためにKJ法の手法を用いて村で起こっている問題点を明らかにし、問題の分析/目的の分析を行い、ニーズの背景にある村の問題点、そしてその問題点を解決するための手段・目的を可視化した。方法としてはポストイットに村の問題点や必要なものを住民に書いてもらい、それを模造紙に貼りながら分類して整理していくというものだ。さらにはポストイットを並び替えたり加えたりしながら優先順位や実現可能性などについても考えていく。ポストイットを使うことで問題点などが視覚的に捉えられ、住民との意見交換や情報の整理がスムーズに行えたと思う。あくまでも“参加した”住民の意見であり、村全体の意見がわかったわけではないし、進行もうまくいったとは言えないが、とても充実した時間を過ごすことができた。

ワークショップの様子。問題を可視化して見ることで分かりやすくなりました。

②料理教室
農村での住民一体化を目的とした活動の一環として、食文化交流と食育を目的に実施した。料理の前に三大栄養素に関するゲームを行い、栄養バランスについて知ってもらった。料理は、栄養を考え野菜を多く使ったパラグアイの料理エンパナーダと、現地でも作ることが出来るがあまり作られていないバナナケーキを住民の方々と作った。子供から大人までみんなでわいわいと調理し、美味しくいただいた。中にはバナナケーキのレシピをメモしている住民の方もおりとても嬉しく思った。

料理の工程を説明している様子です。子供から大人まで大盛況でした。

③折り紙教室
文化交流を目的として、子供たちと一緒にちぎり絵と折り紙を紹介した。子供たちはとても楽しそうに取り組んでくれ、折り方をマスターする子が何人もいた。最後にはちぎり絵で学校の名前を作り、教室に飾り付けて締めくくった。

住民全体集会

私たちが滞在期間中に行った調査のまとめを発表することと、住民同士の意見交換の場を設けることを目的に、住民たちに集めって頂き、村の集会を行った。この日のために準備をしてきたつもりだったが、住民の方は一部しか参加してくださらず、会の進行も上手くいかなかったり、多くの課題があった。事前準備の段階での細かなシミュレーションの大切さを痛感した。さらには、会の終盤に突然雨が降ってきてドタバタとしてしまい、伝えたかったことをうまく住民たちに伝えきれなかった。おそらくこの日は、渡航メンバーの多くが国際協力の難しさを実感した日であったろう。しかし、この経験のおかげで私たちはリアルな国際協力の現場を知ることができたと思う。この日感じたこと、思ったことをしっかりと日本に持ち帰り、次の活動に活かしたいと思った。

全体集会の様子です。国際協力の難しさというのを実感しました。

コラム
農村部滞在を通して
神谷結香 人間文化課程 4年

今回の農村での活動では、フィールドワークの難しさを身を持って実感することができた。全体集会を始め、活動の中でうまくいかなかった部分が多くあった。自分たちにとっては良い経験であったが、住民の方々に対して目に見える結果を残せなかったのは申し訳なかったという思いもある。しかし、もちろん何の意味もなかったと思っている訳でもない。世帯調査やマッピングのデータはより質の高いものとなったし、新たな試みであったワークショップでは住民の方々とたくさん関わることができた。共に過ごした時間の中で多くのことを感じ、刺激を受けたのは決して私だけではないだろう。住民の方々が今までにはない何かを感じてくれたのなら、価値のある活動だったのだと言えるだろう。また、何より、住民の方々は本当に優しく、子供たちもいつも飛び切りの笑顔を見せてくれた。日本では感じることのできない人の温かさをたくさん分けてもらった気がする。本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。農村での活動はパラグアイ渡航の中でも間違いなく最も濃かったと言える、充実した活動であった。

コラム
パラグアイで得たもの
文責:大橋黎菜 人間文化課程 3年

日本から遠く離れたパラグアイは、笑顔が飛び交い、とてもあたたかく、優しさに包まれた国でした。南米特有のゆったりとした時間のなかで、私はたくさんの新鮮な体験をすることができました。その一つ一つが今の私を成り立たせていると言っても過言ではないほど、今回のパラグアイ渡航は私の人生において大きなものでした。国際協力って何だろうと思ってから、徐々に興味を持ちはじめ、こうして実際に現場に行ってみると、こんなにも奥が深いものだったのだと驚きました。渡航に行く前の自分と言った後での自分では国際協力への意識が大きく変わったと思います。今回の渡航では国際協力の輝きの裏側にある、汗と涙の部分を垣間見ることができました。そして、その裏側を知ったからこそ、藤掛先生をはじめとする国際協力に関わる方を尊敬しています。今回の渡航によってようやく私は国際協力のスタート地点に立てたと思っています。この経験を、これからの私の糧にしていきたいです。最後に、今回私にこのような貴重な経験をさせてくださったすべての方感謝いたします。

S村の子供たちとソーラン節を踊ったり遊んだりしている様子です。

コラム
忘れることのできない涙
広瀬太智 人間文化課程 4年

私は昨年度もパラグアイ渡航に参加し、今回は2回目の渡航であった。学びの多いこの渡航であるが、中でも私は農村S村での調査が強く心に残っている。S村の学校建設のニーズの存在を知ってから、2年生の頃からゼミを通して様々な活動を行ってきた。そしてついに現地に趣いた昨年度の渡航では、様々な壁にぶつかった。渡航前は、どんな学校が必要なのかなどの意見を集め、具体的な学校建設のビジョンを立てられたら...という考えでいた。しかし、実際に調査を始めると、学校建設以外のニーズの存在や住民同士の対立など、予想もしていなかった現実を目の当たりにすることとなった。渡航前に準備していた質問項目もほとんど役には立たなかった。私たちはどのようにこの村と関わっていくべきか滞在中に答えを出すことができず、一度日本に持ち帰って考え直すといういわば“保留”という意思を住民たちに示し、村を後にすることになった。だから今回の渡航では、“保留”ではない何かしらの答えを住民たちに示さなければならないという思いが強く、より意気込んで活動に臨んだ。しかし、調査すればするほどその判断は難しくなっていった。学校建設を期待する声、現状で満足という声、現実的な必要性、現在の古い学校の管理...などなど様々な情報に私を含め学生の多くは頭を抱えた。しかし、2年連続保留というわけにはいかない。そして私たちが出した答えは条件付きの“撤退”であった。現状では学校建設をお手伝いすることはできない、他の部分で関わりを持っていくというものであった。苦渋の決断であった。私はこの今回の答えを住民たちに示したとき、思わず涙がこぼれた。自分でもなぜだかわからなかった。ただ、あえて表現するならばそれは「悔しい」という感情だったと思う。ずっと関わってきた住民たちのために結局自分は何もできなかった。かと言ってこれ以外の判断をしたところで本当に住民にとって良い判断となったとも言えない。ただただ悔しかった。どうしようもできない想いが頭の中をぐるぐるして、涙となって出てきたのかもしれない。

藤掛先生がフォローしてくださったものの、結局モヤモヤしたまま村での活動は終わってしまった。日本に帰った今でもあの時出した答えは正しいのか正しくなかったのかはわからない。きっと正解も不正解もないのかもしれない。ただこれが国際協力、これが人と関わっていくことなのだと痛感した。「国際協力って難しいのよ。」先生が2年前におっしゃっていた言葉の意味がようやく少しわかった気がした。あの時の涙は決して忘れることはできない。あの涙を、国際協力へしっかりと向き合うという誓いとして胸に刻んでおきたい。

住民の皆さんとの集合写真です。多くの学びを得た滞在でした。

参考文献
  • 4 川喜田二郎・牧島信一(1970)『問題解決学―KJ法ワークブック』講談社