パラグアイSV

III 南米文化に触れて感じたこと

最後に私たちが感じた南米文化について述べていく。

皆川華野

初めて南米に渡航して感じたことは、人の温かさである。私たちはパラグアイに到着してすぐにホームステイをさせて頂いた。初めての地で、ホームステイも初めての経験。私にとって、知らない人の中で数日生活しなければならないことは大変不安なことであった。スペイン語での会話も満足にできなかったため、コミュニケーションにも大きな不安があった。しかし、空港に迎えに来てくれたホストファミリーは、出会ったその瞬間から「あなたは私の娘」、「あなたは私の姉」だといって歓迎してくれた。見ず知らずの人間をここまで温かく迎えてくれることに私は驚いた。また、その後もさまざまなパラグアイの方々と交流したが、どの場所に行っても、いつも温かく迎え入れてくれ、信頼のしるしのテレレ(パラグアイのお茶)を回し飲みするという、その生活がとても幸せだと感じた。

南米には挨拶としてのハグ文化がある。初めは、その文化に入っていこうとすることに私は難しさを感じていた。しかし不思議なことに、実際に人々と交流するなかで、ハグでの挨拶を自然にしている自分がいた。ハグで挨拶をすると距離が近くなって、その人を信頼して良いのだという気持ちになる。日本で生活しているときに初対面の人につくってしまいがちなよそよそしさを、ハグの挨拶のその瞬間に一気に無くしてしまうのはすごいことだ。

私にとってこの40日間は人の大きな温かさに触れることのできた日々であった。もちろん、学問的な学びも多かったが、それ以上に人間としての成長ができたし、これからももっと成長していきたいと思った。このような貴重な経験をさせていただいたことに感謝し、一生の宝物にしたいと思う。

奥 亮介

渡航期間中のおよそ3分の1は、現地の家庭でホームステイさせていただいた。どの家庭もとても温かく、自分を家族のように迎え入れてくださることが幸せだった。

パラグアイに到着すると、日本では絶対に経験できないような世界が待っていた。現地で食べるものも、見える景色も、行き交う人々も、赤土も、空気も…。そのすべてを感じ取ろうと少し必死になった私だったが、そこから教室の外に、あるいは海外に実際に行かないと学べないことがあると実感した。渡航で一番初めにホームステイした家庭のホストファミリーはNihon Gakko大学という学校に通っているために日本に興味があった。彼ら・彼女らとは、主に英語を使いながら、時々スペイン語でコミュニケーションを取った。ある日はドライブに連れていって下さったのだが、そこの市場を訪れた時、日本のアニメにまつわる陶芸品を見つけることができ、南米社会における日本の存在の大きさを感じ取った。また、日本やパラグアイ社会における問題についても話し合い、とても勉強になった。ホストファミリーとの別れの時はとても悲しかったが、またいつか会える日を信じて日本でも頑張っていこうと強く感じた。日本から一番遠い国にいるホストファミリーとは、今も連絡を取り合っている。

入山都香

私が40日間の渡航の中で強く印象に残っているのはホームステイ先での時間である。今回の渡航の中で、パラグアイでは首都アスンシオンをはじめ農村部や日系移住地などで合わせて4か所、ボリビアではサンフアンという日系移住地でホームステイをさせていただいた。

ステイ先ではホストファミリーが温かく迎えてくれた。家ではトルティージャやソパというパラグアイの伝統料理を一緒に作らせてもらった。親戚の誕生日には家族みんなでお祝いに行き、家の外で音楽が響く中ごちそうを楽しむ。そんな中で道にトランポリンを組み立てて遊ぶ親戚中の子どもたち。日本とは違うオレンジの食べ方。パラグアイ人が“当たり前”と感じることがすべて自分にとって新鮮で、わくわくした。牛が道路を渡り、鶏の鳴き声で目覚めることができる暮らしも、日本から遠く離れたパラグアイやボリビアの地で日本語が飛び交い、日本食と日本文化が継承されている日系移住地の暮らしも、新鮮だけどどこか懐かしいような気持ちで過ごすことができた。行く前はスペイン語しか通じないという環境に不安を感じていたが、振り返ってみると言語の壁を感じられないほど、その文化に入り込めたのではないかと思う。

まだまだ南米について知らないことはたくさんあると思うが、ホームステイをさせてもらったことで一気に南米文化への理解を深めることができたように感じる。パラグアイの都市部から農村部、また日系移住地のコミュニティまでさまざまな地域に暮らす方々の生活を垣間見ることができ、自分もそれに浸れたことを本当に嬉しく思う。何より、ホームステイ先の皆様に、またアレンジして下さった関係者の皆様に対して感謝の気持ちを忘れずにいたい。

張 莉佳

ホームステイを通じて、多くのパラグアイの方と知り合う機会をいただいた。都市部から農村部まで、様々な家族とほんの数日を共に暮らす中で食事について興味を持った。

朝食はほとんどの家庭がコーヒーやコシード(ジェルバと呼ばれる茶葉と砂糖を混ぜ、それを炭で焼いたものから抽出したお茶)とコキート(味のしないクッキー)であった。初めて頂いた時は量が少ないなと感じたが、昼食や夕食を頂き考えが変わった。

昼食や夕食は何か祝い事があるとアサードという人の腕の長さほどもある骨つき牛肉を炭で焼く。そこについてくるのはマンディオカと呼ばれるキャッサバ芋で、朝食を食べなかった分もお腹がいっぱいになる。おやつも欠かさず食べることが多く、チパ(マンディオカ粉とチーズを混ぜて焼いたもの)などを食べる。このキャッサバ芋がとても美味しく、満腹感も得られる。

都市部では多くの家庭が野菜を摂取するが、生搾りのオレンジやパイナップルもたくさん食べるのでここからビタミンを摂取できる。それだけではなく、食前食後に廻し飲みをするテレレ(ジェルバをカップに入れ、ボンビージャと呼ばれるストローを指し、一人飲むごとに冷水を注いで回し飲む茶)やマテ(ジェルバに薬草を入れて温めた熱湯を注いで飲む茶)には多くのビタミンが含まれていることも分かっている。食生活はそれぞれであるけれど、必ずどこかで栄養バランスの取れた食事になっているのだと実感した。

加藤仙丈

私が渡航に参加したのは、南米を自分の肌で感じたいという動機からだった。自分にとって未知の世界である南米では、どんなことが待ち受けているのだろうと胸が躍った。

パラグアイの空港に着くやいなや、待ち受けていたホームステイ先の人々から熱烈な歓迎を受けた。カラフルなドレスを着た少女、カラフルな風船の数々。想像以上の歓迎に驚いていると、ハグをして頬にキスをして挨拶をしている先輩の姿が見えた。すべての経験が新鮮だった。沢山のバイクや車、道を歩く犬や牛、煌めく赤土道。移動時間も、車窓からの景色が私を楽しませてくれた。人もみな陽気で優しくて、どこかまったりしている。気づけば、そんな南米が大好きになっていた。

たくさんの経験の中でも、日系移住地を訪れた時は驚きであった。日本から遠く離れた南米という地で、日本の暮らしを脈々と守り続けている人々が日系移住地にはいた。日本式の学校教育が展開され、日本語があちらこちらから聞こえてきた。日本人移住地として、大きなコミュニティが築かれていた。一世の方にインタビューをさせて頂くと、移住当時の苦しい経験を語って下さった。今は立派な移住地の景色も、移住当時は違ったということを学んだ。

渡航を終えた今、この渡航に参加して本当に良かったと感じている。当初の目的であった南米の地を自分の肌で感じるということは達成できた。そして、人間として成長することができた。南米での経験すべてが私にとって宝物である。渡航に関わって下さったすべての人に感謝するとともに、この経験を生かしてこれからも頑張っていきたい。

住山智洋

渡航の中で、最も我々に学びを与えてくれたものは、「人との出会い」であったと感じる。この渡航中は、とにかく多くの出会いがあった。

ホームステイで受け入れて下さった家族たちは、我々が知らない南米の文化を教えくれた。日系移住地の方々は、移住の歴史、自分のアイデンティティについて詳しく語ってくれた。国際協力の活動現場で出会った人々が、懸命に藤掛教授のプロジェクトに参加する姿から、参加女性が家族の生活改善に懸ける思いの強さがにじみ出ていた。また、その姿を通して藤掛教授の現地での長年の努力が、現地の人々にとってどれだけ有意義なものであるのかを感じ取ることができた。

このように、パラグアイの訪問先で出会った人々から最も多くのことを学び取れたというのは、私だけでなく、他のメンバーもそうだった。そのことは、渡航中、定期的に行っていたミーティングでの皆の発言から分かった。その学びは、将来の自分のイメージへ結びつける者、新たな興味・分野の開拓へと繋げた者と、生かし方は人それぞれであるが、チーム全体として、様々な出会いを通して渡航前より、格段と世界観、話の内容、議論の質が変わり、人として成長するとともに逞しくなったと思う。自分自身も、大切な仲間と共にそうした時間を共有でき、ともに成長が出来たことを大変嬉しく思う。

渡航中に、メンバーで交代しながら綴ってきたブログ(https://ameblo.jp/ynu-paraguayteam/)がある。このブログを見ていただいたら、我々がその時、その場所で得た新鮮な気持ちを見たり知ったりすることが出来るはずだ。

そして我々が素晴らしい数多くの出会いが出来たのは藤掛洋子教授のおかげであることは間違いない。藤掛教授が、パラグアイ社会という現地において27年という長年の努力を通して築きあげてきた絆。その絆の橋を私たちは渡らせて頂いた。藤掛教授の過去から現在に至るまでの努力のおかげで、今回のような出会いが出来たと言える。チームのリーダーとして、この場を借りて心から感謝申し上げたい。本当にありがとうございました。そしてパラグアイとボリビアで私たちを支えて下さり、様々なプログラムに関わって下さった全ての皆様方に心より感謝申し上げます。¡Muchas gracias!