フランスSV

リヨンとリエージュの三つの教会を訪問して

濵本菜々美
都市科学部 2年

今回のSVでは、3つの教会を訪問した。1つ目は、フルヴィエールにあるノートルダム大聖堂、2つ目は、リヨン歴史地区の中心に位置するサン・ジャン大聖堂、3つ目はリエージュ中心部のカレ地区にある聖ポール大聖堂である。ここでは実際に訪れた上記の3つの教会について、それぞれの建築様式に着目しながら比較し、どのような違いが見て取れるか検証する。

フランスSV2019:

ノートルダム大聖堂(ノートルダム・ド・フルヴィエール・バシリカ聖堂)

ノートルダム大聖堂(ノートルダム・ド・フルヴィエール・バシリカ聖堂、上の画像)は、19世紀末に作られた比較的新しい教会で、フィルヴィエールの丘の頂上に位置する。黄金のマリア像が、高地から街全体を見守るように小さな教会堂の上に捧げられているのが特徴だ。内部はモザイク壁画とステンドグラスによって重々しく豪華に彩られていることから、ロマネスク建築とビザンツ建築を融合させて設計されたものと考えられる。

サン・ジャン大聖堂(リヨン大聖堂)は、12世紀に建てられた、リヨン最古の教会の一つで、フルヴィエールの丘の麓、旧リヨン地区に位置する。正面から見ると側廊が高くなっている。また、内部はより繊細に描かれたステンドグラス交差リブや尖頭アーチ、トリフォリウム、バラ窓なども見られた。これらは、11〜12世紀のロマネスク様式において重視された重厚感から脱却し、細部意匠にこだわった繊細な様式へと移行しようとする、ゴシック様式の特徴に当てはまる。

サン・ポール大聖堂(リエージュ大聖堂)は、10世紀に建立されたものの、13〜15世紀にかけて再建がされ、19世紀半ばに復元した教会で、リエージュ市の旧市街地カレ地区の中心部に位置する。19世紀に復元された際に、ベルギーで最も美しいと称されるステンドグラスが付け加えられた。先に挙げたリヨン大聖堂と同様に、カラフルなステンドグラス、尖頭アーチ、交差リブ、トリフォリウム、バラ窓が見られることから、本聖堂はゴシック様式であると言える。リヨン大聖堂との違いとして、リエージュ大聖堂には天井から大きな十字架がぶら下げられていることや、ステンドグラスの模様が幾何学的であったことが挙げられる。大聖堂の修道院部分には宝物博物館がある。神聖ローマ帝国から主権を認められていた旧リエージュ公国にゆかりの品々が所蔵されたという。中には太陽を模した金や銀の宝物が展示され、当時の意匠の高さが伺えた。

三つの教会についてまとめると(下表参照)、建立された時期や建築様式に類似した点はあるものの、一つ一つの教会の外部および内部を見てみると、所々に違いを見ることができた。

名称 ノートルダム大聖堂 サン・ジャン大聖堂 サン・ポール大聖堂
建立年 19世紀末 12世紀 19世紀半ば
建築様式 ロマネスク
+ ビザンツ
ゴシック ゴシック
特徴 黄金のマリア 繊細な模様をした
ステンドグラス
天井から十字架
幾何学的なステンドグラス

今後は、教会を見学し、その建築様式の差異のみに注意を払うのではなく、そうした違いが生じる理由や根拠についても言及できれば、より深い洞察が可能になるだろう。


ギユマン駅とリエージュ劇場

藤村 実芙
都市科学部 2年

2月15日、5日間滞在したフランス・リヨンを後にしてたどり着いたリエージュにおいて滞在前半は旧市街地「カレ」地区とその周辺の街並みと建造物を見学した。

一番初めに目にした建築物がリエージュ・ギュマン駅である。これはスペインの建築家であるサンティアゴ・カラトラヴァによって設計された駅舎であり、それは見る者ものを圧倒する。むき出しの骨格が美しい曲線を描き、シンプルでありながらも目を見張る現代建築である。この駅舎は世界の美しい駅舎として取り上げられることも多々ある。

フランスSV2019:

ギユマン駅 メインエントランス側から撮影

ギユマン駅はカレ地区から約2キロ離れた南部のギユマン地区にあるリエージュ最大の駅である。パリやブリュッセルに向かう高速列車の停車駅でもあり、州内の他の都市や近郊、ルクセンブルクやオランダ、ドイツの近隣都市への発着駅でもある。現在、この駅を起点にカレ地区を経由し、東部郊外を結ぶ、ムーズ川に沿ったトラム(低床路面電車)が工事中で、完成すれば、ギユマン駅は文字通りリエージュの玄関口としての機能を果たすであろうと考えられる。

カラトラヴァは、ギリシャで開催された2004年アテネオリンピックでメインスタジアムとなったオリンピックコンプレックスの設計も手掛けた、世界的に著名な建築家である。そのオリンピックに絡むリエージュのもう一つの著名な建造物であるリエージュ劇場も見学した。東京五輪初代エンブレムがデザイナーによる盗作あるいは剽窃の疑いにより破棄され、現在のロゴに差し替えられた経緯があるが、実は初代エンブレムに対してこのことを訴えたのがリエージュ劇場である。1918年にベルギー国王が設立した王立劇場であり、リエージュにおける芸術の拠点とされている。2013年に改築が終了するとともにリエージュ劇場となり管理運営主体がベルギー王国からフランス語圏共同体政府へと変わった。

2015年8月13日、当劇場とデザイン担当であったオリヴィエ・ドビー氏が2020年東京五輪の公式エンブレムが劇場のロゴと酷似しているとしてIOCを相手に著作権の侵害について地元裁判所に対し提訴した。このことをきっかけに東京五輪のエンブレムは使用中止となり新たに公募がなされることとなった。その後2015年9月には当劇場が、2016年2月にはオリヴィエ・トビー氏が訴えを取り下げる形でこの騒動は終息した。デザインの剽窃は難しい問題であり、当時も有識者やそのほかデザイナーたちによって様々な意見が飛び交った。デザインはその形状だけでなく含意されているものやコンセプトに応じて様々な捉え方が可能である。また剽窃についても何を基準に剽窃ととらえるかはかなり曖昧な部分がある。その人物の背景によって判断されうるものであるのか、またそのデザインの中で判断されるべきものなのか、この東京五輪エンブレム問題では答えは出ていない。

リエージュにはこのほかにもさまざまな美しい建築や芸術であふれている。またリエージュは音楽院を抱えており、音楽の面でも充実している。あらゆる芸術においてそれが独自性のあるものなのか、それとも剽窃が疑われるものなのかという議論はいつでも起こり得る。そしてそれはインターネット社会においてさらに活発化するものである。芸術は自由であるか否かという問題は、今まで問題視されていたものだけでなく、新しい局面を迎えているのかもしれない。


リヨンとリエージュの広場のデザインについて

原田なつ
都市科学部 2年

私はフランスとベルギーの都市空間がどのようなものなのか、日本とどう異なるのかを実際に見てみたいと思い、今回のS Vに参加した。ここでは、都市空間の中でも特に広場のデザインについて、フランスのリヨンとベルギーのリエージュを日本と比較しながら、ヨーロッパの広場を訪れて感じたことを書いていく。

まずフランスのリヨンの広場について、リヨンにはローヌ川とソーヌ川という2つの大きな川が流れている。広場について学ぶために私が読んだ文献の中に、その2つの川のうちの1つであるローヌ川沿いのローヌ川河畔プロムナードが取り上げられていた(小野寺2014)。そこで実際にローヌ川河畔プロムナードを訪れ、レンタルサイクルで自転車を借りて河畔をサイクリングした。

感じたこととして、まず日本よりも川が広く大きく、流れが緩やかだった。そのためゆったりとした雰囲気が川沿いを包んでいた。車道から少し離れているため騒音もあまり聞こえなかった。時を忘れてしまうような穏やかな景色で、とても居心地の良い空間だった。時間帯によって少し雰囲気が異なり、朝は通勤や通学の方が速いスピードでサイクリングしていて忙しないが、お昼になるとのんびりと散歩する人が増える。夜は照明がつき、ロマンチックな雰囲気になる。歩行者専用の通路と自転車専用の通路は分かれており、散歩もサイクリングもしやすい環境が整っていた。ここは以前、多くの車両が並ぶ駐車場だったが、当時の市長が現在のプロムナードに修繕したそうである。ここは私がリヨンで一番素敵だと感じた空間だった。

次にベルギーのリエージュの広場について述べる。リエージュは道路がタイル張りのところが多く、家は煉瓦造りだった。まちの雰囲気として、色鮮やかで細工などが可愛らしい、可憐なリヨンと比較すると、リエージュは色が暗めだが細工などが重々しく美しく、荘厳だった。

フランスSV2019:

リエージュ中心部にあるランベール広場。後ろの建造物はリエージュ司教公国時代の司教宮殿。
地下にはローマの遺跡もあり、見学ができる

リエージュの広場を訪れて感じたことは、広場と道路が同じタイルのデザインで、段差があまりないため、広場が実際よりも大きく広がっているように感じられることである。この広場以外の道路でも、日本に比べて歩道と車道の段差が小さく、歩道が実際よりも広く、ゆったりとした雰囲気が感じられた。

SV中には、この2つの広場だけではなく、ここには書き切れないほどたくさんの広場を訪れることができ、日本とは異なる雰囲気を感じ、居心地の良い空間を作り出す工夫を学ぶことができた。これからも様々な都市空間を訪れてたくさんの工夫を学びたい。