オーストリアSV

世界一美しい図書館から考える公共空間

岩崎羽衣
小宮スタジオ 都市社会共生学科 2年

今回の渡航において、私の個人調査テーマは「図書館から見るウィーンにおける公共空間の在りかた」というものだった。具体的には、公共空間が人々にとってサードプレイスになりうるのか、あるいはサードプレイスになるとしたらその要素はどのようなものなのかを調査するためにウィーン各地の図書館を訪問した。日本において公共空間というと、堅苦しいイメージが持たれやすい傾向にあり、そのなかでも図書館は特に静かにする必要のある「気を遣わなければならない場所」になっていると感じる。

日本のガイドブック等で見られるように、ウィーンにはカフェが多く存在し、人々の集う環境が数多く街中にあるのが特徴だ。ではそんなウィーンにおいて、公共空間は人々の集う場所になっているのだろうか。日本と比較して、日本のような堅苦しいイメージは持たれていないのだろうか。

本レポートでは、実際に足を運んだ図書館のうち特徴的であったものをいくつか取り上げ、上記の点に注目しながら考察を進めていきたい。

1) 国立図書館

オーストリアSV2019:オーストリア国立図書館(宮廷図書館)。壁を埋め尽くす本の数々

オーストリア国立図書館(宮廷図書館)。壁を埋め尽くす本の数々

高いドーム型の天井に、木製の棚。中心には石像。どこかの博物館のようにも思われるが、実のところこれは、ウィーンの宮廷図書館(プルンクザール)である。現在この宮廷図書館は、国立図書館として観光用に公開されているが、もとは18世紀にホーフブルク宮殿内に作られたもので、皇帝の所持する書籍や学者たちの書物が保管されていた。

「世界一美しいバロック建築図書館」とも言われ、今となっては一大観光地の宮廷図書館だが、かつてこのように一般市民に公開されることはなかった。まして、今日のように"図書館"という施設は、一般市民の生活の中に存在するものではなかった。というのも、かつて図書館というのは知の宝庫であり、皇帝の権力を示すものであったからだ。このプルンクザールも図書館の中心に皇帝の石像が置かれ、書物が皇帝を取り囲む様子から当時の図書館の在り方が顕著に現れているのが分かるだろう。

ところで、この宮廷図書館のちょうど裏側にもう一つのオーストリア国立図書館があることをご存じだろうか。こちらもオーストリア国立図書館ではあるものの、観光目的での入館を一切受け付けていない。また、一般市民用の図書館であるにも関わらず入館チケットを買う必要がある。私も中に入ろうとすると、チケットを買う際に観光用の図書館ではないことを何度も確認されたのが印象的だった。

図書館内部は本当に静かで、足音を立てるのもはばかられた。利用者の年齢層として学生や社会人、ご年配の方が見受けられ、勉強しに来ている人ばかりだった。

雰囲気をつかむために私もしばらく自習スペースでノート整理をしてみたが、居心地が悪いほどの静寂で、あまり長居できなかった。

2) 大学図書館

ここまで国立の図書館を見てきたが、次は大学図書館を見てみよう。
SVでお世話になったウィーン工科大学(TU)や、ウィーンのトップ校ウィーン大学の図書館を見学した。大学ごとに特徴は違ったが、どの大学図書館にも自習室だけでなくコミュニケーションが取れる歓談の場が設けられていることが印象的だった。

オーストリアSV2019:このソファに座れば、たちまちプライベートスペースの完成。(ウィーン工科大学図書館)

このソファに座れば、たちまちプライベートスペースの完成。
(ウィーン工科大学図書館)

内部生ではないので外からしか見られなかったが、ウィーン大学ではクリスマスに合わせて自習室内部がデコレーションされていたのも印象的だった。

3) 市立図書館

日本同様ウィーンも、公共施設の管轄は国だけでなく市も絡んでいる。ウィーン市が管理する図書館の代表として、ウィーン市立図書館を最後に紹介したい。

オーストリアSV2019:ウィーン市立図書館の様子

ウィーン市立図書館の様子

カラフルな館内には、幼児からお年寄りまで幅広い年齢層の利用者が見受けられ、館内はにぎやかなスペースと静かな自習スペースが混在している。また、入り口付近では無料で観覧できるアート作品の展示や、軽いイベントも行われており、とても市民に開けた印象を持った。またこの市立図書館、本館は市の中心から少し離れているが、サテライトが市の中心部にある。こちらも本館同様、様々な利用者を受け入れている。

ここまで図書館を例に 帝国>国>大学(国立)>市立 とみてきたが、同じ図書館でも徐々にフランクな、誰でも受け入れる雰囲気になっていったことに気が付いた。

このことから、運営主体の規模が小さくなるほど、多くの人に開けた公共空間になるのではないかと考える。

今後はこの調査を活かし、公共空間とサードプレイスの関係、人の集う空間の在りかた等の調査や考察を深めていきたい。


Komiya studio Vienna SV   2019

Social Collaboration / Ui Iwasaki

My personal them was “How public spaces can be a third place for people”. I chose libraries as a research target, and looked for their differences between public (national, municipal) and private. The results were as follows.

1) National library (Hofburg)

This library was built for the purpose of the emperor to store his books in the 18th century. It is now a one of the most famous places in Vienna, but in the past, there were no chances for citizen to enter the library. Moreover, libraries were not common things in citizen’s life at all. It is because, libraries were thought to be a treasury of knowledge, and it represents the power of the emperor.

Vienna SV 2019 : National library

National library

2) University library

I went to the Vienna Technology University and Vienna University. There were some differences between the two libraries, but one thing in common is that both libraries has not only studying space, but also some places to communicate with others.

Vienna SV 2019 : Once you sit on this sofa, you can get your own private space.

Once you sit on this sofa, you can get your own private space.

3) Municipal library

There were many people, from children to aged people, at the library and it seemed accepting various age groups. There were enough studying spaces and children’s spaces, and they were both mixed together. Also, there were an exhibition at the entrance. Through those event and atmosphere of the library, I had the impression that it is very open to the citizens.

Vienna SV 2019 : Vienna Municipal library

Vienna Municipal library

Conclusion

I’ve been looking for some libraries as a research target of public spaces so far, Empire>Nation>University (National)>City, but don’t you think them gradually became frank and welcome for everyone? These differences can be an important clue when thinking of how public spaces can be a third place for people.

Thank you for reading.