フランスSV

オリーヴ畑

中村風賀
人間文化課程1年

9月19日、私達はオリーヴ農園を訪ねた。「ラリーワ・マリーナ(L’Aliva Marina)」という銘柄のオリーヴオイルとオリーヴ加工品を生産する、サンドリーヌ・マルフィーズィさんが経営する個人農園である。島北東部のカップコルス半島の付け根にあるワインで有名なパトリモニオ村はずれにある。「ラリーワ」とはオリーヴの実を、「マリーナ」とは「海の」いう意味のコルシカ語で、その名の通り、農園は海のすぐ近くにあった。

私達を笑顔で迎えに来てくれたサンドリーヌさんに、海の近くでオリーヴを育てて潮風は害にならないのかまず聞いたら、塩は全然問題ない。栽培には土壌と日照時間、気温と接木と品種が重要なのよと答えてくれた。

個人経営聞いてもっとこぢんまりとしたものを想像していたが、その広大さに驚かされた。全部で6ヘクタールでこれでも大きい方ではないらしく、私の感覚が日本人のそれだったのかもしれない。

オリーヴ栽培は下の写真に見られるように、山の斜面で行われる。腐らせないために、水はけが大事らしい。こういったところからもコルシカ島の自然が伺えるだろう。

この季節は収もうオリーヴは実をつけていた。オリーヴは収穫の際、手でもぎ取ったりはしないそうだ。自然に落ちた実を収穫するらしい。木を揺らしてオリーヴを落として収穫する手法もあるのだが、ここの農園はそれを採用せず、地道な収穫をしているそうだ。オリーヴ組合には属していない個人経営もあってか、品質のこだわりも強い。

島北西部のバラーニュ地方では、地元オリーヴ農家から果実を買い集め、搾油しオリーヴオイルを生産する組合があり、コルシカ産オリーヴオイルのほとんどはこの組合のブランド「オル・ウィ・ワラーニャ(Oru di Balagna)」である。しかし、サンドリーヌさんは本当に良いオリーヴオイルを生産するには、自分でオリーヴを栽培しなければならないという。

コルシカ島では近代以降オリーヴ栽培、オリーヴオイル生産が見られるようになったが、栽培農家と「ムリニエ」と呼ばれる搾油職人が別の分業形態であった。組合が設立され機械化による効率的なオイル生産がはじまってもこの分業は維持されていた。一方、サンドリーヌさんのように個人でブランドをもつオリーヴ専業農家兼オリーヴ搾油加工職人が近年、カップコルス地方で幾つか見られる。

ここでは、オリーヴの栽培、収穫だけでなく、その加工も行っている。もちろん収穫。したオリーヴをそのまま売りに出すこともあるが、ここで塩漬けや搾油も行っている。その作業場を見せて頂いたが、専門の特殊な機械があった。手作業をイメージしていたが、効率の良い機械が多く用いられている。

上の画像はその機械の1つだが、これは小さい方である。洗浄したオリーヴをまとめて粉砕する機械もあり、その方はもっと大がかりなものであった。オリーヴを塩漬けにして置いてある容器が何個もあって、その塩漬けオリーヴを1粒食べさせて頂いたが、とても塩辛く、また苦味があった。これは、さらに加工をしてペーストにしたりするらしい。

このオリーヴ農家のオイルは、AOP「オリウ・ウィ・ゴルシガ(Oliu di Corsica)」を取得している。「オリウ」とはオリーヴオイルを、「ゴルシガ」とはコルシカを意味するコルシカ語である。AOPとはEUの規定で、産地の地理的環境や風土に由来するすぐれた特質を有する産品について、これを指し示すために用いる特定の地域や指定区域の呼称である。これを表示するためには、生産にかかわる条件や製法等の要件を満たすことを必要としている。

AOP「オリウ・ウィ・ゴルシガ」の最大の要件は「品種」、コルシカに独自のオリーヴ品種を一定割合以上栽培しなければならない点である。組合生産形態だと、まず、契約農家がどういう品種を栽培しているのか把握する必要があり、事実上、他品種との混在を容認せざるをえなくなる。サンドリーヌさんが個人で栽培する理由である。オイルだとコルシカ品種だけなのか、他品種との混在なのかは専門家でも口にするまでは分からないが、パテなどのオリーヴ果実加工品なら見た目で分かる。サンドリーヌさんはうちで栽培しているのは早生種のディエルマーヌ種と晩生種のサビーナ種のコルシカ品種だけ、だからオイルだけでなく果実加工品も自信をもって出せる、と言う。

「果実を手で摘み取らない」のもAOP要件である。組合もAOP取得しているが、組合契約農家の中にはAOPをクリアしながらも量や効率の面から晩秋に機械で枝を揺さぶってオリーヴ果実を落として収穫するところもある。特に真冬に熟す(色が赤紫に変わる)晩生のサビーナ種は、自然落下するころの果実から強い香りとフルーティーな味わいが生じるため、自然落下果実と機械で人為的に落下させた果実が混ざったオイルができ、味や香り、風味にムラがでるのだ。一方、「ラリーワ・マリーナ」は自然落下果実のみ使用することで味や風味、香りを維持している。

これをクリアしているため品質も安全なのだとか。その証拠にフランス農水当局からの金賞や銀賞などの賞状も多く飾ってあった。サンドリーヌさんは2002年に荒れ地だったこの地を開墾、整備し、もともと繁殖していた野生のオリーヴにコルシカ品種を接木して農園をはじめたという。最初の収穫が2004年、それからわずか2年でAOPを、5年で銀賞を獲得したことになる。コルシカ島に訪れた際には、お土産として買ってみるのもいかがだろうか。